和田義彦と肖像画
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《 私と芸術観 》

私の芸術観はイタリア留学で生まれた。
私の二十代の頃は、絵の留学といえばパリであった。
しかし、1970年代にイタリア映画の巨匠デ・シーカ、ビスコンティ、フェリーニなどの映画の波が日本に一気に押し寄せ、演劇好きな私を魅了していた。
そこで絵画の学びと共に、芝居も含めて原語で触れられたらと考え、二十九才の時にイタリア給費留学生としてローマに渡った。
生で目の当たりにした美術館や教会・バチカン宮殿等で観た古典絵画は余りにも名作が多く、その感動は想像を絶するものであった。日本で学んだ教科書の美術作品が、ここには溢れんばかりに存在しているのだ。
ところが、留学先のローマ美術学校は余りにも程度が低く、ある種の虚しさを感じた。
この古画が現代絵画に繋がる過程を徹底的に知る意義を探った私は、有名な修復学校“ローマ中央修復学校”が有ることを知り、すぐに編入学を決意した。
修復作業は、その時代の有名な画家が何の基底材(キャンパス・板など)に描いているのか、溶剤や絵具はその時代にどの様な工夫をしてその色を生み出したのか、修復を学ぶことによって、何世紀も前の画家たちと、まるで直接対話をするような経験が出来た。このことは、観賞するだけでは絶対に解き明かすことが出来ない、その画家の秘密に触れられる唯一の貴重な体験である。
私は、一年間の修復作業を通して古典の深部を学び、そのことにより模写が出来る知識とスキルを得た。
初期ルネッサンスの有名なシモーヌ・マルティーニの「受胎告知」の板画模写で半年を要した。その後、私は6点の模写をすることになるのだが、プロの画家としては乗り越えなければならない要素が、この模写をすることにより得られるという本質的なことを知った。
そのために、一年の留学予定が約六年間に及んでしまった。

和田義彦

※肖像画のご依頼やご質問がございましたら下部のフォームにお願い致します。

《 模写作品紹介 》

Type A
○ベラスケス作(16〜17世紀) 「イノケンディウス10世」 《1974〜76年和田義彦模写》
  ベラスケス−スペイン生まれ。スペイン絵画黄金時代の代表画家。この作品は、晩年の代表作である。バロック時代のあざやかな赤色(ラッカ・デ・ガランス)と白色の大胆な色面構成は現代に通じ、フランシス・ベーコンなどに多大な影響を与えている。様々な美術館の館長や学芸員にベラスケスは古典作家で最高の画家と聞いた。
どの作品も完成する前の途中描きを知るところに意味があり、模写することによりルネッサンスから印象派、現代画家に至る歴史的伝播を通して名作が生まれている事が良くわかった。ピカソの生涯の作品がそれを物語っている。ベラスケスの特徴をより具体的に挙げると、スフマート(ぼかし)というテクニックである。ローマのドーリア美術館でこの作品を観た時不思議な感動を覚えた。着衣の上部の赤色が微妙に透かしながらぼかされている。この技法が手や顔にも使われており、例えば手の場合、近くで見ると抽象的に描かれているのだが、離れて見ると、なんと指がリアルに描かれているように見えるのだ。まさに魔法の技と言えよう。模写をしてその意味が理解出来た。また、リアルに描かれている古典技法と、あえて抽象的に描かれているベラスケス的ともいえる技法は現代作家に影響を与えている所以である。この絵を模写している時のエピソードだが、模写中に本物の作品の白衣部分にうっかり絵具を付けてしまうという大変なことをしてしまったのだが、親しい館員に言ったところ「重大な事であるが君は修復のプロ、慌てずに消し取りなさい」と寛容にフォローをしてくれたことを懐かしく想い出している。
 


《 この技法を用いた和田の作品 》    
「森村誠一氏の肖像画」
完成に至るまでの表現方法を図解説(森村氏のウェブサイト)している。ベラスケスの作品「イノケンティウス10世」「王女マルガリータ」の流れるような筆使いはベラスケスから影響を受けて描いている。
「ブータン王国・国王王妃の肖像画」
ベラスケスの宮殿画家としての一連の王や王妃の像に見られる描法は、写実的な顔・手部と衣装・背景の絨毯などに見られる抽象的とも感じる大胆な構成・鮮やかな色彩を駆使して国王夫妻を描いてみた。私なりのベラスケス絵画でもある。
「グル・リンポチェの仏像画」
17世紀のチベット仏教の開祖。ブータン国民の心の支えとなる像であるが、中国に破壊され、今は存在していない。この仏像の画をブータン国王に直々にプレゼントをした際に、心から喜んで下さり、ブータン国民に披露させて頂きます、とおっしゃられた。
   

「岡地氏の肖像画」

   
     
Type B    
○ホセ・リベーラ作(16〜17世紀) 「聖バルトロメ」 《1975年和田義彦模写》

「バコ」 《1975年和田義彦模写》

  ホセ・リベーラースペイン生まれ。若くしてイタリアに渡り、小さなスペイン人(スパニョレット)と称され、生涯の大半をナポリで過ごす。イタリアの巨匠カラバッジョ(1571年〜1610年)を師として、強烈な明暗法を駆使して独自な描法を生み出している。レンブラントも映像的に人物を表出して描いているが、これはリベーラの影響であるレンブラントの最も特徴的な画法である肉厚な油彩表現はリベーラから離れて独特なオリジナリティーを生み出している。
最近、日本では写真絵画のような表層的に描く作品が流行っている。レンブラント、鴨居玲、初期のゴッホ作品に影響を与えているのは、リベーラ作品のディテール(細部)に有る。東洋画では破筆法と言われるが、使い古した硬い毛質の筆で、老人の願部、着衣部を筆圧を強めて削り取るように塗り込んでいる。部分を拡大すればはるかに古典のイメージから離れ、その後の作家が自身なりにそれをオリジナルに変容して新世界を生み出している。レンブラントの自画像のタッチに色濃く表れているが、リベーラがレンブラントを生んだと言っても過言ではない、と私は考えている。
プラド美術館で模写中に鴨居玲氏が訪ねて来て、私が途中まで描いていた「聖バルトロメ」の模写画に対して、ここからは描けそうなので譲っていただけないかという申し出を受けた。もちろんお断りしたのだが、鴨居玲氏の描く老人の世界はリベーラの画法から来ている。


 
《 この技法を用いた和田の作品 》    
 
「綿貫民輔氏(元衆議院議長)の肖像画」
国会議事堂に飾られている綿貫民輔氏像は、写実的に描き似せるという約束事があり、リベーラの手法をとった。細部まで描き込んでいる。
「野呂田芳成氏(当時防衛庁長官/農林水産大臣)の像」
杉板に氏の姿をポイントだけに絞り描き、他部は意識的に塗り残している。現代性を強調した。
 
     
Type C    
○ルーベンス作(16〜17世紀) 「聖ペドロ」 《1975年和田義彦模写》

「プロセルピナの略奮」 《1975年和田義彦模写》

 

ルーベンス−ドイツ生まれのバロックを代表する画家。ヨーロッパのどの美術館にもルーベンスの作品は溢れるように飾られている。ルーベンス工房を経営し、弟子たちが作品の大半を描いて、ポイントの顔部は師匠ルーベンスが描くのだ。こうして生まれた肉の塊のような裸体像に、当初私は好きになれなかった。しかし、何度も目にしていると、この画家の作品を通過しない限り、いわゆる狩猟民族の西洋画を理解することが出来ないと感じ、模写の作品としてプラド美術館にある彼の二作品を選んだ。
ベラスケス同様に、描く途中の行程が今の私の作品に影響を与えている。
「プロセルピナの略奪」は、白い肉体の肌色の微妙な重ね塗りに手こずり、新たなキャンパスに描き直すなど、模写の完成に計8ヵ月も費やしてしまった。
「プロセルピナの略奪」に描かれている裸婦の肌色は鮮やかな透明色である。当時、チューブ入りの絵具は市販されておらず、粉絵具を油で交ぜて制作している。ルーベンスは多作で有名で、キャンパス(画布)をパレット代わりに、朱・黄・白・灰など直接画布に並列的に置き、大きな平筆で一気になぞり描き、独自な肌色を醸し出している。私の模写中にその部分描きを見ていた美術館のお客が驚いていた。この交ざりきれない油彩技法により、立体的に画面から飛び出すかのような生々しい生命体を感じるのだ。
「聖ペドロ」ともテンペラ画である。あの印象派画家ルノアールは、ルーベンス描法から学びとり独自の作風が生まれている。
※テンペラ画とは、顔料・塗料を黄卵+松ヤニ+乾性油を交ぜた油で溶き混ぜる、ルネッサンス時代から発展したバロック時代の新技法である。


 
《 この技法を用いた和田の作品 》    
「国王の像」
ルーベンスの筆勢は激しく、私は描く途中に、この現代的な描法は必ず活きると確信した。この作品は顔にポイントを置き、リアルに描き、周辺は省略法的に半描している。
「フラメンコを踊る女性」          「成人式」
日本の肖像画は半身(座位)から上部を描く、ある意味でパターン化している。私は様々なポーズをとる人物、色彩も現代風に工夫して作品としての様々な肖像画を試みた。
     
   
○多様な材料を使ったその他の肖像画
「O氏像」
細いコンテ鉛筆でデッサン風に、また細密描写をした作品。親しい知人である。
「ソフィア」
留学中にスケッチをした女性をもとにキャンバス布地に薄く下塗りをして、木炭、コンテ、鉛筆、テンペラ画(黄卵に酢酸を交ぜ、粉絵具で描く古典技法)で描いた。O氏像共に、主要部分に絞り描くことはモダンな雰囲気を醸し出している。
「ボサールの学生」
パリの芸術大学(ボサール)にて学生達と描き合いをした作品。厚いボール紙に油絵具でデッサン風に表現した。



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